他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

奇抜提灯

台風の猛威を感じなかった。夜眠っている間に通り過ぎてくれたものと見える。網戸と窓ガラスがびっちょびちょだったので、その片鱗は窺い知ることができたが、それは「先刻までこの席に誰かが座っていたんですね」と電車の座席に忘れられたハンカチで乗客を感じ取るようなものであって、コミュニケーションとかそういうものではない。胸ぐらを掴んでボッコボコにされた人もいるようである。ふわりと香るくらいで幸せだったのか否か。天災だけに、神のみぞ知る。飲屋街を知っているだろうか。店に入った事がなくとも、そのエリアの空気感くらいは知っているはずである。私はさっぱり飲屋街とは縁がないが、あそこはあそこで独特の独自文法を持って雰囲気を醸成しているため、昼間に散歩する分にはそれなりに楽しい場所である。夜はアルコール臭くなるので論外だ。チェーン店はチェーン店なので、おおよそ画一的でどうにも興の乗らないものがあるが、個人経営やチェーンなのか私営なのか微妙なラインの居酒屋なんかは面白い。以前住んでいた近所には、焼酎のラベルを外壁に所狭しと貼り付けまくった店があった。清潔感のない店だったはずだ。懐かしさを感じさせる彩色のポスターをはっつけている所もある。傍目にはとても居酒屋とは見えないお洒落な外装の店もあったりして。十店十色である。で、木材メインの小屋っぽい、これぞ居酒屋みたいな居酒屋は、たいてい軒先に大きな提灯を吊るしている事が多い気がする。その提灯には、「焼き鳥」だとか「生ビール」だとか「居酒屋」だとか書いてあって、その場所をその場所たらしめる重要なアイコンとして機能していると思うのだけれども、この間、歴代で最もキャッチー「ではない」提灯を発見した。先の3例から察せられるように、軒先ジャイアント提灯は、その店のウリや場所柄をアピールするために吊るされている。幟なんかもそうだと思うが、客に魅力的に訴求する手段の一つだと私は思う。できるだけ、なるたけキャッチーに整え、客の足をこちらに向かせようとするためのサインだ。しかし、この間見つけたものに書かれていたものは、果たして、「芋煮込み」であった。芋煮込み。芋……。煮込み……。絶妙にキャッチーではない。「さきいか」の方がまだキャッチーだと思う。芋煮込みである。まさかの。少なからず重要な場所に「芋煮込み」を持ってくる感性からして、おそらく里芋の煮っ転がしなのだと思われるが、それにしても、世の人々は「おっ、ここ芋煮込みやってんじゃん、入ろーフッフゥー!」となるのだろうか。経験が乏しいため分からない。potato headはどちらだ。