他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

引かれるものがなくなったが

昨日の日記を書いた直後に、髪をばっさりいった。襟足だけだが。風呂上がりに、一番水滴がぴちょんぴちょん垂れてくる部位だったので、業腹だったのである。ゴムでしっかり縛って、ハンズで2000円もしたハサミでジョキジョキした。ジョキジョキ出来なかった。毛髪の量が多く、一本一本がバカに出来ない太さなのである。目に見えない後頭部で、ハサミが髪を「じょり……じょり……じょり……」と断ち切っていく音は、深夜に聞こえてきたら恐怖を催しそうな不穏な音だった。ミニチュアの馬の尻尾みたいな髪の束が、ポスティングされていたピザの広告を貼り合わせて出来た敷物の上にぼとりと落ちた。力士の銀杏落としの際にいかなる感情が去来するものだか知らないが、断面を見て毛先の密度の高さに気持ちが悪いなと思った。魚の目をやると、患部にイソギンチャクみたいな「じっと見つめると気持ち悪い」細かい皮のささくれじみたぶつぶつができるのだけれど、そんな感じだった。ずっしりと重い。髪は女の命だと言うが、いきなり背後から切りかかられて毛髪をばっさりいかれたら、それは怖いだろうなと思った。突然の奇襲を死角から仕掛けられたという事実を差し引いても、である。ある程度の長さまで達すると、存外な質量を持つ。べろんべろんして正直邪魔だった襟足以外はどうでもいいので、それ以外の部位を適当に、いい加減に梳いて(ハサミはいたって普通のノーマルハサミなので、髪の毛を切る事はおそらく想定されていない。牛乳パックはよく切れる)風呂で流した。夜を越して、よもや寝癖がつきやすくなっているのではあるまいかと洗面所の鏡を覗き込んで見たところ、そんなもんは杞憂であった。それどころか、「このくらいの髪の長さの女の子可愛いじゃんんんんん」という仕上がりになっていた。「二次元ばかり見過ぎて三次元がよく分からなくなったので、リアルでこれくらいの長さなら可愛いなと思うレベルまで髪の毛が伸びるのを放っておくプロジェクト」を実行していたと言えば実行していたが、奇しくも髪の毛を切るという形でその目標は達成された。なるほど、私の心の琴線に触れるのはこのくらい、らしい。目安までに二次元で例を挙げると、『恋物語』のガハラさんくらいだ。鏡に映る現し身の向こう側にある、何かしらの要素に反応して、めっちゃくちゃに欲情するので、この長さがどうやらベストらしい。精神衛生的に。しばらく、向こうの人生、伸びるたびにこれくらいに切り揃えようと強く思った。かわいいから。