他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

死ななパルレ・ドゥという事はない

昨日も相当に暑かったが、今日も大概に暑かった。体を動かしていようがいまいが、きつく締まっていない蛇口から水がほんのり染み出して、大きな雫を形成してぴちょりぴちょりと流しを叩く時のように、汗腺がだらしなく呆けていて不快指数を垂れ流しにしている。日が暮れる頃には、指先でついと触ると張り付く、粘った薄膜で全身が覆われているような気がして、早く風呂に入って身綺麗になりたい欲と、早く風呂に入ったところで排泄物の緩やかな分泌は止まるところを知らないのだからできるだけ遅らせたい欲と、色々が頭の中でないまぜになって、夕寝により額に張り付いた一面びっしりの脂汗のとろみを持って頭がぼんやりする。室温に食べ物を放置しておくとたちまち悪くなりそうだった昨日の日差しを木立が遮り、黄色と黒の淡い縞模様が走る影の中、何の花も咲かない、ただ区分けのためだけに茂っている灌木の根元に、何かよく分からない、しかし生理的嫌悪感は余さずくすぐる物質がねっとりと身を横たえていた。まとわりついて絡みつくような、日本の暑気が引く糸をぶちぶちと断ち切りながら覗き込んでみると、犬のウンコと、その傍には正体不明絶対唯一の虹色の粘体があった。七条ほどばらまかれた犬のウンコが、生物本能的にやばいと悟らせる「物体」としか言いようのない何かを取り囲み、不浄を絵に描いたようだった。糞と、淀んだ七色に光る汚穢に上半身を乗り出すと、たったそれだけで、ぶわっとギンバエの煙が立ち上った。鼻に迷い込む刺激臭でこそなかったが、見ただけで胸焼けのする、しかし生命の密度だけはやたらと濃密な景色だった。あの色彩は何を照らしていたのか、答えが一生出ないまま頭の中にへばりついて離れなくなりそうだった。意地は汚くはなるけれども、麗しくはならないなと気づいた。意地汚いとは散々言われるが、意地麗しい意地美しい意地良いとは言われない。意地という言葉が持ち出される時点で、意地にはどことなくネガティブな意味が漂う。意地を見せる時は、窮地に追い込まれているあるいは追い込まれそうなので発奮が必要になる場面がほとんどだし、食い意地など張ってばかりだから風船のように弾けて四散しそうである。綺麗にはならないものを持っているのだから、綺麗になれなくても綺麗でなくてもと胸のどこかで納得が行った。また夜に寝られるようになったというか、ここ数日の就寝失敗を量的に取り返そうと今度はやたら眠りが深くなって全然起きられなかったので、体調が普通に持ち直すには再び時間がかかりそうだが、体調が普通で平常で平熱な事があった覚えが薄いので、50をスタンダードとすると普段ぼんやりと操縦桿を握っている体調は42くらいの調子で大して何の終着点も目標も定める事なくぐいんぐいんとレバーを振り回しているだけだとも思えてきた。衣服にしたい食べ物がいくつかあって、羊羹とか枕によさそうだなと思ったり、キャベツレタスなんかは夏場の羽織りものによさそうだなと考えたりして、しかしその中でも特に服になんねえかなと思わせるのは薄焼き卵だったりする。耳元で突然「薄焼き卵の色を思い浮かべてみてください! ハイ、ドン!」とけしかけられたら、頭の中にはレモンイエローのような、しかし卵の白身とかで焦点と輪郭がぼやけた、薄焼き卵の素朴な黄色が真っ先に思い浮かべられるに違いない。どんな種類のガーメントにすればいいのか詳述するほど素養がないけれど、ポンチョとかがよさそうである。フライパン一面に、底が透けて見えそうに広がった卵や、クレープ屋のDJディスクみたいな鉄板で生成される薄膜を見るたびに、あれ纏いたいなと思うので、ポンチョがよさそうである。だいたいこんな感じ、ほどのイメージしかなく、手応えのあるポンチョ像が私の中で一切のイメージを結んでくれないけれど、纏うものと言えばショールとポンチョしか思いつかないので、ポンチョがよさそうでありポンチョでよさそうである。ほんのりした塩の香りが立ち上るのも、いいアクセントなのだ。薬缶でグラグラにお湯を沸かして、それに茶バッグをいれて15分くらい待ってからコップに注いだ、ジュールのあるお茶はとても美味しい。味がどうこう風味がどうこうではなく、喉越しが美味しい。ビールはこの世で一番嫌いな飲み物の一つだし絶対飲まないし絶対許さないが、ビールは味わうものではない喉越しを楽しむものなんだよ……とこちらに焦点を結んでくれないアドバイスをしてくる人が味わうビールはもしかしたらこんな感じなのかもしれない。熱量を持った液体が、食道その他諸々を通過していく感触が心地よい。この間までこれが心地よく、沸かしたてのお茶が上質な体験を提供してくれたはずなのに、踏み台トランポリンジャンプをかましたかのような気温上昇現象のせいで、さっき飲んだピチピチのホット烏龍茶をトリガーに汗と体温上昇がとめどなくなってきた。お前ぇ……。