他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

季節外れのスノウホワイト

極めて難しい事に、人間は過ちを繰り返して学んでゆく生き物なので、つまづかないで巧みに歩き続ける人もいないではないが、基本的にトライアンドエラーを原則としているから、幾度か実際に間違って道を踏み外して怪我をして学習する事になる。かつて負った傷を思い出して、誤った方向に足を踏み出さないようになる。まだ一度しか間違った事がないような道は、だから、高確率で足を挫いてしまうし、もし無事に通れてもすぐ脇を通り過ぎた、あり得た可能性に背筋がぞっとする。長々と前置きを書いているのはできるだけ本題に触れたくないからで、でも一度傷に消毒液が染み込む痛みを我慢しなければ後々膿んで大変な事になるから、やっぱり残しておかないといけない。日中、帰りが遅くなりそうなので一旦家に帰る機会を設けた。帰りに少しだけ遠回りをして、スーパーで買い物をしてから家に戻った。買ってきたものを冷蔵庫に突っ込んでから、ゴミ箱がもういっぱいだった事を思い出し、くくって玄関に置いておこうと思った。ゴミ箱から重くなったビニル袋をずるりと引き出し、口を縛って玄関に放った。新しい袋をファーニッシュする前に、ゴミ箱の底の状態を確かめておこうとついと覗き込むと、小さな斑点がぶつぶつと散らばっているのが見えた。本能的にそれが何なのか察知し、ぐいと顔を近づけると、違わず当に、イグザクトリィ蛆虫の乾燥した死骸がゴロゴロと転がっていた。数年前の記憶がぞわぞわとフラッシュバックする。ゴミ箱の周りの床に目を凝らすと、近眼が極まっているので床はただの茶色に見える、一面に広がる点々が見えた。確定である。間違いない。やっちまった。数年越しに、大量の蛆虫を発生させた瞬間だった。小さな小さなマイクロサイズの楕円形に干からびた、命なき害悪の残骸がそこかしこにみっしりと横たわっていた。命ない故に、身動きもせず居座り続けているが故に、身体の芯がむずむずするような、本能的に耐えられない気持ち悪さがとろみを帯びた冷水のように押し寄せた。ここからは心を殺さなければならない。まず、掃除機をかけようとした。前回、これは悪手だと理解していたはずなのだが、目の前の光景に全てを奪い取られていた。ある程度を処理してから、キッチンペーパーを濡らして少しずつ残骸を拭い取る。力を入れると、表皮が破れて体液が溢れるから、力を入れないよう慎重に。埃も巻き込んで一面を整理してから、ティッシュペーパーに水気を含ませ最後の仕上げにかかる。どうにかなった。どうにかなったが、どうにかしなければいけなくなった時点で私の負けなのだ。今日は完敗だった。どうにか原状復帰したものの、床に這っていた鼻水色の蛆をつまみ取った今日という日を、絶対に忘れない。