他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

云光年の光

予定の時間まで少しだけヒマがあったので、しばしば通り道にしている大学構内の書籍部に寄った。レイアウト・雰囲気などが個人的な趣向に大変マッチしており、人生で一番好もしい書籍販売空間だと思っている。品揃えはちょっとアレだが。雰囲気が心地いいというのは、それだけで莫大なプラスポイントだ。一般文芸のコーナーを見た。最近は、何と言えばいいのか分からないが、直木賞の対象になるような小説群にさっぱり触れておらず、伊坂幸太郎の単行本なんかを見ると、あのストーリーテリングを単行本のごつい、重みのある感じを手に受けながら読んだら最高の娯楽なのだろうなと過去の私だったら思っていただろうなと思い、どこかへ忘れてきたものの正体、その欠片をほんのり悟った。文芸誌を買うなり、批評サイトとか読者感想投稿サイトなりを追って最新の潮流を追うほど、というかそういう追い方が好きではないので、全然見も知らない、一文字も覚えていない作家がざっと並んでいて、好きだけど全然知らない話を読んだなと思いつつも、やはり金がかかっていない私人の楽しみ方である以上は好きにやらせてもらおうと棚をついついっと眺めていたら、顎が外れて戻らなくなった。正直、心の中で「オンギャーーーーーッ!!!!!」と叫んだ。てめえが追っていないのだからそりゃあ当たり前だろうが、筒城灯士郎の新刊がぽてりと立てられていた。その現象を知らないと知らないだろうが、それは世の摂理であって当然である、あの筒井康隆が初めて書いたライトノベルビアンカ・オーバースタディ』の続編を勝手に書いて文学賞に送りつけ、筒井康隆本人の太鼓判を得て堂々現れたド級の化け物だ。本家以上に荒唐無稽でぶっ飛んでいて、しかし面白さでねじ伏せてくるあの『ビアンカ・オーバーステップ』がもたらしてくれた興奮を身体が思い出したのか、血がぐつぐつと煮え心臓がひっくり返り目の裏が白くチカチカと光るのが分かった。心が缺けて体験できなくなった、生命の実現がくれる運動カロリーの躍動が通り過ぎて行った。かつて追っていたのは、あの後ろ姿だったのかもしれない。その筒城灯士郎の、今度はオリジナル完全新作であって、生きる事を引き延ばす口実になった。今日び、本についている帯なんてさっぱり当てにしていないので、とりあえず本文である。いつ読もうか考えているが、手垢で縒れて馴れ親しんだ快楽は、確かこんなものだったような、はず。