他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

使い勝手の悪いジャッキ

乗った電車が、乗ったのが変な時間だったというのもあるのだろうが、それにしてもガラガラですっからかんで、人はどこに行ってしまったのだと思った。いや、人はちゃんといる。そこここにそこかしこにいるはいるのだが、密度が目に見えて下がった。地下鉄なのに、いや、開くから機能としては備え付けられているのだろうが、滅多に開いているのを見ないから忘れがちだが、窓も開いている。埃っぽいというか、少し淀んだ空気が、がたがたと重たい物体が触れ合う音を直接に届けてくる。密閉空間になりやすいから、換気だろうか。トンネルの中で窓が開いていると、化け物的な何かが這入り込んで来そうで怖い。妄想を喚起する何かがある。太宰治の文庫も終わりに近づいてきた。走れメロスが所収されていた。中学だか高校だかの国語の時間に読んだっきりで、本当に粗い筋しか覚えていなかったけれど、メロスは途中で一瞬諦めていた。セリヌンティウスごめんちょ、と言いながら、御託をドミノ倒しのように並べて諦めていた。さわさわと流れる水にヴァイタリティ的な何かを吹き込まれて気概を取り戻す事にはなる。こんなに人間の臭いがする描写があったっけ、と思った。全然覚えていなかった。太宰治の文章は、ストレスなく読めるボトルウォーターみたいなものだが、途中で読むのに疲れて放り出したくなるような味の濃い文章が読みたくなってきた。舞城王太郎はびっくりするくらい疲れる。人生であれほど読むのにカロリーを要する文章に出会った事は、母語に関して言えばない。飛行機の滑空速度でグラウンドの障害物競走をさせられるかのような、一瞬もハンドルを離せない姿勢が必要になる。筒井康隆の、宇宙衛生博覧会、の漢字がちまちまいじられたタイトルのあれ、を久しぶりに読みたくなった。外出するな、と言われているし。書店で売っているのもほとんど見た事がないため、いっそ懐かしの、高校の図書室で読み漁った筒井康隆新潮文庫を買いあさってみるのも悪くない。悪くないが、言い出した事を実行にキャリーするまでに一年くらいかかる無精、あるいは行動の優先順位がなかなか変動しづらいソリッドな内的原理を持っているために、結局やらずにリストから消えていきそうな気もする。都合のいいパラフレーズをしやがって。スーパーのカップ麺売り場が、少しだけ復旧していた。缶詰の棚は、なんかすきっ歯になっていた。都会は、そろそろサインがぴかぴかし始めた。