近所に全然雪が溶けていない場所がある。
間違いなく、今夜の冷気でキンッキンに冷やされて明朝ツルッツルになる。
凍り始めた路上の雪をスニーカーの裏で擦りながら、「雪にゴム被せたちんちん擦りつけて床オナしたらええんちゃうんか」と思った。
あと、子供たちが元気に雪合戦しているところを見て、「雪に精液混ぜてもバレないだろうな」とも思った。
雪だるまを6つくらい見たけれど、うち一つは下半身がぱっくり割れていて、中に混ざった土草が固まって汚い断面だった。
同じく帰路で、突然電話口に陽気な歌を朗唱し始めたおじちゃんがいたのでそれにも心臓が驚いた。
ついさっきまで大人しくしてたんだから、いきなりミュージカルスイッチを入れるのやめてくれ。
歌い始めと同じくらい、歌い終わりも唐突だった。
歌ってる時真顔だったし、何だったんだろう。
図書館で本を読んでいたら、知人と呼ぶには怪しい知人に声を掛けられた。4か月ほど同じ場所に居合わせたけど、話したことはなかった。
他愛もない、なさすぎることを聞かれてつまらん答えを返して、10秒くらいの束の間のコミュニケーションだったのだけれど、終わってからいくつか気づいたことがある。
名前知ってたのに、去っていく後姿を呆然と座りつくして目で追いかけながらやっと思い出した。
最後に何を言われたのか分からなかったけれど、意表を突かれて挟まれた意識の空白から戻って「また明日」と言われたことに気が付いた。
名前を呼びかけることも、挨拶の意味を察することも、挨拶を返すこともできなかった。不明瞭な「ばお”っ」的な音を出した気がする。
人と話したのが久しぶりまくりで気づかなかったけど、こんなによそ行きの言語野が退化しているとは思っていなかった。
こういう時くらいは、ヤバい、と言ってもいいと思う。
目上の人と話す機会もあった。
「大丈夫か?」と聞かれて「大丈夫です、はい」と答えるやりとりを4回くらい繰り返した。俺の言葉にそんなに説得力がないか。
パソコンの暗転した画面に映った自分の顔を不可抗力で見てしまい、そりゃ説得力ないぜ、と感じた。
理由は分からないが、私は頬にほとんど肉付きがなく、常にこけている。四六時中サカナクションの山口一郎フェイス状態である。髪もテキトーだし、服もテキトーだ。パーカーの上にジップパーカーを着ていた。
服飾に関して知見が一切ないので分からないが、まずかったのだろうか。
すごく乏しい語彙で対応してたし。省エネだった。
終わって、階段を下りしなジップパーカーのチャックを上げながら、「全然チャックの下のところが噛み合わんけど、ちんちん弄ってると思われたらかっこ悪いな」と思っていた。