他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

もしかして「ほっくり」と「栗」がかかってんのか

「冴」という漢字が、実はすごくかっこいい構成なのではないかと気がついた。二水に牙である。三水ではなく二水であるところに微妙なレアリティを漂わせるし、牙はまあそれだけで十分かっこいいと言っていいだろう。あまり人名に入っているところを見かけないような気がするのも、かっこよさげに見える原因に一つだろう。フィクションではしばしば人名に採用されている事が多いけれども。チーム・バチスタシリーズにも、この漢字が入った女性がいたと記憶している。それで、漢字辞典を調べてみると、確かに「にごりなどがなく、きわだってあざやか」「頭の働きや腕前があざやかだ」「しんしんと冷える」などの意味があるが、これは日本で追加された意味らしく、原義はこおる、さむい、ふさぐのようだ。そもそもが冱(こおる、さむい)という字の俗字である。そしてその時さえ凅という字の仲間だったりする。水が固くなる、ということだ。冴はスタイリッシュな感じがするけれど、それは意味の方に引きずられて字面を見ているバイアスのせいもあるのだろうが、その派生元である2つの漢字はそんなに格好良くない。トンビが鷹を生んだとはまさにこの事だろう。冱は「亙って」に似ているものな。冴はかっこいいという話であった。何かどこかのコーヒーチェーン店頭で、濃厚マロンなんちゃらかんちゃらというドリンクの看板が出ていたのだけれど、その惹句に「ほっくり」という形容詞が用いられていた。……。ほっくり??? ほっこりは分かる。温泉に入ったりこたつに入ったり可愛らしい子供を見たり、まあそういうのはほっこりする。だが、「ほっこり」ではなく「ほっくり」である。「ほくほく」は分かる。ジャガイモやジャガイモやかぼちゃやお金を儲けて懐が温かいなど、そういうのはほくほくと形容されよう。しかし、重畳による形容詞ではない。さっくり、ざっくり、とろ〜り、もっちり、ぎっちり、どっしり、ぽっきり、すっきりなどと同じジャンルに属すようなフォームに当てはめた形で、新しく「ほっくり」という分かるけれど分からないadjectiveが爆誕している。確かに、言いたいことというか、食感というのか、食後感というのか、そういうのはふわ〜んと伝わってくる。日本語の凄いところである。しかし、突如現れた変異生命体「ほっくり」にこのまま市民権を手渡してしまって良いものだろうか? 手元に喧嘩を売るべき理由がそこまで見つからないので拳を降ろさざるを得ないけれども、広告によって、新しい生命が受容されていくのだろうか、と思ったり露ほども思わなかったりする。