他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

焼けた線香の束を握る

ぺらっぺらにダイエットしてしまったチューブをつまんで、歯磨き粉がなくなりそうだな、と思ってから2週間くらい経つが、なくならないまま歯磨きの機会を提供し続けてくれている。そろそろなくなりそうかな、危ないかな、と察知して歯磨き粉を買って来たのが嘘のよう、いや徒労のようである。もうダメかな、と首根っこを引っ掴んで絞り出し、そろそろ終わりかな、と思ってはチューブ末端からしごき上げてひねり出している。意外と出続けるものだ。母方の実家では、これらのプロセスに加えて「チューブをかっさばいて中身をこそぐ」という俄かには信じがたいシメの手段があるのだが、そこまでしてもったいない道を爆走したくはない。洗濯物を取り込もうかと思って窓から半身を乗り出すと、一面に綿埃を敷き詰めたような、黒い紫色だった。降るな、と思ったが、ご飯を作るために室内に引っ込んだ。換気のために窓を開けていると、ほどなくしとしとと水滴が染みを作る音が聞こえてくる。案の定であり、どうして降ると思った瞬間に行動を起こさないのか自分の行動原理が理解できないが、身体の準備はできているのでさっと動いてさっと室内に避難させた。半分湿気ていた。干した時間が遅かったせいか、それとも。事あるごとに、頭が鈍いなと感じる。タオルばかり敷き詰めたダンボールの中で、脳味噌が乾いて静かに横たえられているようだ。脳漿がなく、有機的な神経もなく、ただそこにあるだけで眠い。首を伸ばして、工事現場のフェンスを越した景色を見ると、ショベルカーが土を掘り起こしている。正面を掘って、脇に土を置く作業をしているショベルカーは正気なのかと思うが、あれはきっと何かしらの手続きなのだろう。掘って、土を盛るという。土をショベルというかスコップというか、あれらの道具でほじくったのは果たして何年前になるだろうかというほど地面を掘り返す作業に長年従事していないけれど、土は概して硬いものだという記憶は手先に残っている。だから、漫画で死体を埋めるための穴を掘っている時にも、ちまちまとしか土が飛び交わないのである。ショベルカーは、機械の力を存分に振り回して、土塊をかき回している。もしかして、土はとても柔らかいんじゃないかと錯覚できるほどで、地面ってチョコプリンなんじゃないかと思った。人間は、死んだらチョコプリンに還るのだ。死んだら白無垢の生クリームにくるまれて、チョコプリンのカカオ粉になるために焼かれに行く。