他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

味付卵とは、卵本来の味を軽視した問題のある表現である

ビルとビルの間の怪しい隙間に、これまた怪しい広告が貼られていて、お金持ちの女性の相手募集みたいなあの手のビラは漏れなくラミネート加工されており、間違いなく下手人がいるのだが、バンクシーがごとくまだその正体を見た事がない。この間見たのは、お金持ちの女性の相手募集ではなくて、女性電話オペレーター募集だった。日給2万円と書いてあった。ウィークデイを働き通せば、手取りは後で考えるとして、月に40万円の稼ぎがある事になる。贅沢しなければ生きていける金額だ。日給2万円の女性電話オペレーターって何するんだろうと思ったが、あの手のビラとレイアウトや文字配色のセンスがほとんど一緒だったので、まあつまりそういう事なんだろうなと察しがついた。なんやかやのアプリを駆使すればごく普通にビデオ通話ができてしまう現代において、テレフォンえっちがどれくらいの立ち位置や重要度を占めるのか、どちらも経験がない私には測りかねるが、小説が文字情報以外の周辺情報を基本的には一切排除しているのと同じように、電話口から聴こえてくる音声だけを頼りに構築される世界というのもまた、否定すべからざるひとつの現実の在り方なのだろう。妄想の筋肉は、ボディビルにハマりすぎた筋肉ダルマと一緒で、あるいはそれを超えて、漫画の世界のように果てしなく際限なく鍛えられるものであるから、ただ通話口の向こう側にいる女の子と他愛もない話をしているだけでも(私は他愛もない話をしているといたたまれなくなるのでしたくないのだが、見も知らぬ相手といきなり話が弾むようなネタなんてあるだろうかと常々疑問で仕方がない)、「い、今、この子は他の汚いおっさんにちんこぶち込まれながら必死で平静を装って僕と話してくれているんだ(ふーっふーっ)」という地点まで想像の世界が広がる事を容認する。事実がどうであれ、主観的な事実というのもまた事実だ。仕事と割り切った上で、淡々とそういう電話をこなして日給2万を受け取るのも、また人生である。すべて想像だが。そして、私に上記のような趣味はない。ホルモンが食べたくなったので買ってきて、フライパンからひとかけつまみ上げて口に運んでから、これまでにホルモンに対して感じていた不服感の正体がやっと分かった。勝負になっていないのだ。噛み切れないまま、しかしまったく嚙み付けないわけでもなく、両者気まずいままもちゃもちゃ咀嚼を繰り返して、試合の空気が散漫になったところで、どちらからともなく嚥下している。そこには明確な、食った食われたというジャッジがない。なあなあのまま始まらずして終わっている。だから私はホルモンが苦手なのだ。