他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

pocket of the universe

土曜日、図書館の近くまで行ったので、そういえば前読んだのは1が付いていたから、きっと2かあるいは3まで続編が続くのだろうと思って岩波文庫緑の棚を刊行年が新しい方から遡っていくと、遡るまでもなく一番ケツの方に夜と陽炎、開高健の自伝二巻目があった。あったので借りた。1、2とナンバリングしているくせに、2で終わりらしい。なぜだ。上下分冊にすればよかったのに。岩波文庫のHPを見ても、3が出るとは書いていない。基準はよく分からない。開いて一行目を読み出すと直ちにすぐさまに、特有で独特の、湿度と粘度とほんのりとした固体っぽさを感じる、練り消しみたいな文体が流れ込んできて、これこれこれなんだよ俺が食べたかったのは求めていたのはさあ、と脳味噌が喜びの快感物質を噴出させるのを感じた。恐ろしいまでに力強くのたくっていて、それが途切れる事なく、図太く腰を構えて見据えてくるから、押しも押されぬ堂々とした、しかしながら寂しげに内向いた視線の切れすぎなさに舌が丸まって解けないし巻いた尻尾が鬱血してもげそうである。味が妄想できるし感触も匂いも想像できる。徹底的に濾し取って残ったエキスのような密度があり、向こうが見透かせない分厚さがある。美味い食べ物とはこういう事だなと思う。最初に解像する事を許さず、一言目として、噛み砕いて飲み込まず「うめえ……」と呟くしかない、緻密で強固な有機体を産出できるのは、やっぱり、すげえよなあ。暇だったので、というか何もやる気が起きず、尻に火がついてやらなければならないような事もなかったので、買ってきたのを危うく忘れかけていた外付けHDDをMacのバックアップディスクとして設定しておいた。数時間繋いだまま放っておくと、ディスクイメージをそのまんまミラーしてくれたらしい。すげえな。開いてみると、同じ日であっても、更新された時間ごとにファイルが分けられていて、復旧する分には楽ではあるが、ここから逆探知するのは死ぬほどめんどくさいなとも察された。ひたすらうず高く積むのは楽だが、どこにある何を引っ張り出せばいいのかを考えるのはめんどくさい。午前中は空が真っ白で、屋外が病的で気の抜けた白にぼんやりと発光していたが、午後になると軽い異物音が聞こえるようになり、8割ほど閉めていた窓を滑らせると、斜め45度くらいでささめいているテグスの切れ端のような細い線が一面に見えた。洗濯物を気持ちよく干したい。