他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

情操を感じるための情操

朝のまともな時間に起きた。変な時間に寝て変な時間に起きていたので、実家のリビングででかい間口を開けてのんびりと佇んでいる壁一面と言うにはしょうもないが、採光としては十分な窓ガラスから差し込む陽の光を見て自然の恩恵と生物の生態についてしばし思考を巡らせようと思ったものの、起き抜けの眠気はそんじょそこらのドラッグさえ吹き飛ばしそうな重さがあるのでそんな事はできなかったししなかった。川でカニが泳いでいる事を思い出したので川に行きたいと弟が言っていた。家からそれほど遠くないので付き合っても構わない。ぎちぎちと睨みつけてくる太陽光さえ処理する事ができれば、確かそれなりに大きな木の数々が茂って、水面に柳が毛先を垂らしてさえいたような記憶らしきものがあるから、それこそ本当に別に付き合っても構わない。川に入るかどうかはまた別の話だが。そこで出されるでかいソフトクリームを食べようという事で、母が運転して砂谷農場に行った。相当に辺鄙な場所にあり、ついでに迷ったのでその感いよいよ増す事はあれど減ずる事はない。迷った途上で、わたわたしながらスマホにグーグルマップをインストールして道筋を確認したので、SIMを確保してから初めてまともにスマホレベルのテクノロジィを使いこなしたような気がした。実は、スマホ用のSIMを調達したのには、もしかするとこれで道順を過たず知る事が可能になり、ひいては旅行に出かけるのにも前向きにあるのではないかとの期待があったのだが、そういう気が微塵も起きようという気配さえこれっぽっちも毛頭全然ナッシングであるあたり、私という人間の性壁がとろけ出しているような気がする。到着してすぐ目の前に小屋があって、山の中には似つかわしくないお洒落な内装で、それなのに券売機でチケットを買って、巨大なソフトクリームを食べた。雑な甘みがなく、すっと澄くような清冽さで牛乳の香りが抜けていき、確かにそれは人生で前例がなかった。最後までぎちぎちに詰まっていたのも素敵だった。あとは見るべきものを探す方が難しく、牛舎で牛の体を間近に観察したり、これは結構面白かった、干し草を求めてべろべろと這い回る舌であるとか、この間小説で読んだ銀色に光る家畜の糞尿混淆物が銀色に光る実様であるとか、干し草がどのように卸されているのかとか、面前に広がる眼下に何物をも提供しない崖前の広場で追いかけっこをしてみたりだとか、そんなであった。ぶちぶち千切った雑草をヤギに食べさせている家族がいた。ニラかと思った。