その土地の空気の匂いというものがあり、帰って来た時に、じゅんじゅんと滴るような湿気の匂いがした。曇っていてよかった。晴れていたらまず間違いなく死んでいた。荷物を引きずって帰る過程で、一瞬太陽に晒されただけで全身から吹き出してどろどろになったので、やっぱり曇っていてよかった。飛行機の中で『ステキな金縛り』『スマホを落としただけなのに』を観て、オチがそこそこ似ていたので偶然的なセレンディピティ的なあれを感じた。そういえば三谷幸喜脚本を意識的に観たのは初めてかもしれないが、コントの一場面で継続的に爆発し続けるあの恒星誕生様態みたいな方法が好きになって、ちまちま場面が変わりフリーフォールではなく道路を走っている時の一瞬の浮遊感みたいな刺激では満足できなくなっている身体になっている事が分かった。スマホを落としただけなのには、なんか面白そうかな〜どうかな〜くらいのテンションで再生したらすごく面白かったので、やはり適当にたまたま偶然出会うのが性に合っていると思う。アルコ&ピース酒井健太のサイコ極まりないブリブリバキバキの演技はすげえなと思った。ものすごくナチュラルに板についてべとべとに気持ち悪い。最後のドーン、ぐるぐる、バーン、から始まるクライマックスはよかった。スマホは落とさなかったが、ぶっこ抜いていたサブ機のSIMカードを無くした。今までそんな事を思った事もなかったけれど、あんな小さいカードに全部詰められても、小さいからそれはなくしちゃうよと思った。現になくしたから。財布の仕込みポケットに入れておいたのだが、いつの間にか紛失したらしい。頑張って再発行していきたいと思うが、もしかしたら〜カバンの中に落ちてないかな〜という色気もあるのでちょっとだけ待つ。頭が時差ぼけでバカバカのバカになっていて、眠くて覚醒していて眠るといつまでも眠れてお腹が空いたり空かなかったり極に振れまくっている。余ったから持って帰って来たクスクスを鍋に適当にぶちまけて生成し、棚の中に残っていたレトルトカレーに流し込んで食べたら、思ったよりも大量になった。底なし沼をすくってもすくってもとぷん、とぷん、と揺れるだけでさして減っていないように見えるのは、水と小さな粒子がいい感じの関係を築いてぷくぷくになっているからかもしれないと思うほど、食っても食ってもなくならない黄色い粒とカレーの混合物。ある意味カレーが飲み物だったかもしれない。