他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

ぶりぶりヴルスト

いつ買ってきたのか忘れた、多分月が変わる少しだけ前だったはずだが、業務用1kgフランクフルトの袋が冷蔵庫の中にあった。まともな晩飯を食べる気が起きない時に、適当に調理してそれを2本くらい食べればちょうどよかった。翌朝胃もたれして起きていたので身体に良くはないのだろうが、思考停止するにはちょうどよかった。今日もめんどくせえなと思って温め用のタッパに中身を開けようとしたのだが、ほんの一瞬だけ、異臭というか「臭」の集合体、概念の煮詰まったような香りがした。袋の裂け口に鼻先を持って行き、すんと軽く吸い込んでみると、頭の中でただひとつ、紛う方無きあの匂いが明滅した。お尻の穴の匂いがした。お尻の穴の匂いがした。お尻の穴の匂いがした。大事な事なので3回もリフレインしてしまったが、まだそれなりに数の残った肉棒の群れからは、お尻の穴の匂いがした。当事者の私も意味が分からないので字面で追っている方もさっぱり分からんちんだろうが、間違いなくそこにはお尻の穴の匂いがあった。くせえと思った。ビニール袋貯蓄エリアから、手頃なコンビニ袋をひとつ急いで引き出し、突っ込み、口を閉じてから同じく冷蔵庫の中でもやしのように細くなってしまったきのこの株があるのを思い出してそれも入れて、数ヶ月間に渡って冷蔵庫の冷凍コーナー(冷気が出過ぎて凍る場所がある)で沈黙を守らせて見て見ぬ振りをしていたぼんじりインジップロックも道連れとした。旅は仲間が多い方がいいだろう。ぼんじりに至っては、何か緑色の汁が凝固した跡があった。何だったのだろうあれは。知らぬが仏という言葉を知っているだろうか。私は、固く固く口をふんじばってゴミ箱に入れた。どす、という重量感とともに、ゴミ箱の水位が沈んだ。残念だが、尻の穴の匂いを嗅ぎながらご飯が捗る趣味嗜好ではなかった。最後にちらと見たところ、フランクフルトの消費期限は十月八日だった。今が、十七日なので、つまり。その間に2回ほど食べた気がするが、死ななかっただけよしとしよう。防腐剤的なあれとかそれが切れたのか、それとも本性を現したに過ぎないのか、私には計りかねるが、ある種のフランクフルトを劣化させるとお尻の穴の匂いがするという世界の真理をまた一つ尻、知り、どうすればいいか分からず持て余し、話のタネとして消化するような人も周りにいないので、せめてどこかの誰かがこの素敵ならざる鼻曲がりの事実に何かを見出してくれればと書き残しておくが、去って行った食欲の書き置きだけがどこにも見当たらない。