他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

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フライパンで炒めている玉ねぎの匂いを不意に嗅ぐと、咄嗟に眉を顰めてしまうくらいには臭かった。あの匂いは何なのだろう。smellについて、中性的、一般的な場合には「匂い」、不快な要素を含む場合には「臭い」の字を当てているのだが、この辺りのルールを自律的に抱いている大多数はいなさそうなので、たまにムッとなる。臭(にお)いって、それ、臭(くさ)いんか? 雪が降るとか、降らないとか、降りそうだとか聞いていたけれど、一応まだ降ってはいない。ただ、空の色が凄く、ぷよぷよと指で触れそうな、芳醇な白を含んだグレーの透明で一面覆われており、今にもどうにかなりそうな気配を始終撒き散らしていた。結局終日どうにもならなかった。窓の桟に丸く溜まった水滴から、外はおよそ寒いのだろうなと容易に推察できるほどに。別に何もしなかった。何かしたら何か言いたい事が出てくるはずなのに、今日は、多分、おそらくきっと、心が特に沈んで死んで倦んでいたのだろう。倦む事に倦む事がないのがinertiveな精神の欠陥で、いついつまでもstagnantで首を垂れて骨が痛んでもそれ以外の方法を思いつかない。ずっと、来てもいない何かが過ぎ去るのを待ち続けているだけの、死んだ路標だ。マイルストーンは、自分がマイルストーンである事を分からない。筒井康隆の何が一体好きだったのか、洗い物をしながら、全てがタスクダウンした頭で考えていた。家の給湯器から出るお湯は、どうしていつも白く濁っているのだろう。発熱性の物質でも混ぜ込んで、電熱的なシステムとかではないのだろうか。本当に、精液のカウパー氏腺液くらいの濁り方をしているから、毎度毎度微妙な気分になる。カルキが著しく混入しているとか、そういうわけでもないだろうし。あの、正視に耐えられなくなる事があるほどの即物的な描写に、心が打ち震えていたのだ。かつては。小説からしかリアルを摂取できなかったあの頃に、あの頃が一番、心が水気を湛えていたと思う。その頃の貯蓄をすすりながら長らえてきたが、それもそろそろ限界だろうし何と言うか……。心霊トンネルの中で来訪者を待ち構えている間の幽霊って、暇じゃないのだろうか。いくら憎しの念に取り憑かれていても、心に少しだけ間隙が生まれる時があると思うのだけど。そしてその瞬間、何よりも怖くなって裸足でどこかに逃げ出したくなると思うのだけど。憎しの念の義務感に自らを囚え、楽になっているだけという場合もあるんじゃないかと思うのだけど。