大腸カメラ検査の日だった。朝から絶食し、2リットルくらいある腸管洗浄液を飲み干した。輸血や点滴のパックを、そのまま巨大にしてペットボトルの飲み口をつけたようなものだとイメージすればよろしい。事前に説明を受けていた通り、ほぼまんまスポーツドリンクの味だった。とは言うものの、味を誤魔化されたところで、私もいい大人なので、「どんな味がしようとも、俺は今下剤をばかすか飲んでいるんだよな……」と意識してしまうと、そのほのかな甘みでさえもはかとなく排気を促すものになる。「腸管洗浄液」とは本当によく言ったもので、どういう原理でそうなるのかさっぱり分からんのだが、飲み干した分が「肛門から」じゃばじゃば出てきた。人生で初めて経験したが、尿道を経由するのと同じ程度、肛門からも水分はじゃばじゃば出るのである。部屋の中をうろうろ歩き回って腸の運動を活性化させながら、次々と訪れる便意に屈してトイレに引きこもっていた。洗浄液とは、何度でも言いたくなるほどに、全くよく言ったものである。回数を重ねるごとに「便カス」(検査説明書にそう書いてあった。人によってはめちゃくちゃに出るらしい。私はそれほど出なかった)が少なくなっていくのが面白かった……と言いたいところだが、前日から大したものを口にしていなかった事に加えひたすらに水分を絞り出す試練に身体がすっかり参ってしまい、検査を受ける前からぐったりしていた。思うところも腹蔵もあるが(出したが)、身体が中から綺麗になるのは気持ちがいい事は間違いない。今まで生きてきた中で、最もアナルファックに向けて身体が準備できていた日だったと思う。検査の前に、なんか正体の分からない薬剤を点滴したし。「これ何の薬ですか?」と聞いても、どういうわけか要領を得た返答を得られなかった。検査着は、着衣でカメラを挿入できるように尻の部分にスリットが入った、極めてエロ漫画的な服装だった。体側で寝転がって、ジェルをぶち込まれて、カメラをぶち込まれた。腸のまっすぐな部分にカメラが侵入するのは特段苦痛でもなんでもないのだが、腸が湾曲する部分にカメラが滑り込む過程は痛かった。「いって」という感じではなく、「う"っ……あ"っ……」と呻くしかない痛みだった。女の子の身体になる事は多分ないと思うので(メスイキは覚えるかもしれないが)こういう事を思うのは的外れだったのかもしれないが、「そりゃ異物挿入は辛いよな……女の子はもっと太いのが入るんだもんな……優しくしても何も変わんねえよ……」と思いながら耐えていた。痛くなくなる薬を打たれていたと思うのだが。自分の腸壁を生まれて初めて見たけれど、エロ漫画的に有機的だった。生々しかった。とても。検査結果としては、害のない痔の一種だったので、差し障りがなくてよかった。検査のせいで下半身がずっくりと重い。だるい。