買ったことをすっかり忘れていて、本の山からぽろっと出てきた辺見庸『もの食う人びと』を読み始めた。のっけから残飯を食う羽目になっていたり、フィリピンで日本軍が食人を犯した話が出てきたり、密度というのか、地面との距離が近い。自分の言葉を持つ人の、メシを食う文章は、どうも魅力的である。開高健、米原万里が私としては双璧であるが、向田邦子もよく、筒井康隆も笑犬楼か何かで書いていたと思う。そこにあるものから引き出せる情報が多いのかな。手持ちに潤沢な札があるからこそできることであって、人間としての厚みを感じる。自分にはないものが眩しく見えるんだね。