本屋にいる時、私は「うわあ」と思っている。うわあ、また本を買ってしまうと思っているし、うわあ、今手に持っている本が全部で〇〇円で、直近の口座残高から引くとうわあと考えているし、なんでこんなことを考えながら本を買わないといけないんだと思っている。また本を買ってしまった。伊丹十三の本を読むのはほぼ初めてのはずである。『ヨーロッパ退屈日記』というのを買った。なぜかカバーがこちらを向いていて、装画が変わっていたのだ。本人の筆によるらしい。多芸な人だ。米原万里、開高健の文章をオツユのしたたる文章とするならば、こっちはさらさらで手に残る愛想のない砂のようだ。随所に偏屈というか、一般に芸術家気質と言われるようなものがある。それはそれとして、読み心地のいい文章なのがにくい。他にも買ったが、だらだら読むだろう、多分。