目の前でおっさんがタバコの吸い殻をポイ捨てしたので、あんまりこういう言葉を使いたくはないが、文字通り「か、カス〜〜〜〜〜！！！」と思った。たまに常習犯のポイ捨てプレイヤーの身のこなしを目撃する事があるが、彼らはプロなので一連の動きに淀みがない。渓流の流れのように、どこにも迷いが、その行為に対する躊躇いや自省がなく、邪魔なものを圏内から追い出すシークエンスとして定着している。フィクションでしばしば見る、スッと人を殺すキャラクターの所作を目の前で目撃すると、人道やら何やらと考える前に、まず、その行動の滑らかさに意識が持っていかれるのではないだろうか。絶世のパフォーマーを目前にしている時のように。元々目録として存在していなかった「焼肉で好きな部位」が近年固まってきて、鶏ヤゲン軟骨とホルモンが二大項目として人生のこの先座を占め続けそうな気がしてきた。ヤゲン軟骨のいいところは、食べ物じゃない感じがするからである。居酒屋や回転寿司で出てくる鶏軟骨の唐揚げは、関節部分だけを抜き出したかのような鼻くそサイズで、コロコロして食べやすいものだが、ヤゲン軟骨はドスの切っ先みたいな白いプラスチックっぽい何かが肉片を伴ってやってくるので、瞬間食べ物に見えない。イカのドタマ裏から引き出した薄い骨、あれにボリュームを持たせて具現化召喚に成功したみたいなアピアランスが好きなのだ。実際に食べるとゴリゴリむきゅむきゅ種々雑多な食感がパーリーナイトを開演し忙しい。腹が膨れた実感もない。ただ、どうしようもなく好きである。ホルモンは、噛んでも噛んでもなくならないので、食の永久機関を手に入れた気になって貧乏性が満たされる錯覚が味わえるから好きだ。たまに、噛みきれない何かしらの軟体を超えた、食べ物としてのホルモンに出会ったり出会わなかったりするので、地平線と化した感性のパルスがぴくりとする瞬間があったらそういう時かもしれない。特に必要ないのに焼肉の話をしたのは、スーパーで買ってきたシマチョウのトレイにかけられたビニルに、「お鍋にしまちょう！ 焼肉にしまちょう！」とどうしようもなくどうしようもない、冒頭で述べたような「か、カス〜〜〜〜〜！！！」と叫びたくなるようなトリプルB級のコピーが書かれていたからである。これらの文字列は、ゴシックや明朝ではなく、ポップでチープなデザイン書体で踊っているから、なおのこと心に脱力の叫びを起こさしめる。では、ご飯にしまちょう。ばぶ〜〜〜！！！
