「潰しに行きますっていうのは社長になるっていうこと??」
この前、道を歩いていて、横を通り過ぎたサラリーマンが電話口にこう言っていた。どこにも句読点がなく、ただ一続きに、こう言っていた。耳で捉えた時に、ギョッとした。こういう、呑み屋でしか聞かないようなセリフは、呑み屋の外にも存在するのだと知った。呑み屋に行かないので実際に言われているのか分からないが、こんな会社やめてやる、とか、今に出世して見返してやる、とかは、その辺で言われているイメージが強い。電話口の相手は、一体、どんな人だったのだろう。私がすれ違った人は、社内でもそこそこに地位にあって、しかも相手にタメなのだから、トップ層のひとりとひとりだったのかもしれない。どうなのだろう。文言のインパクトが強すぎて、温度が測れない。思わず携帯のメモ帳に書き込んでいたのを、さっきうたた寝している時に思い出した。今日は、なんだかすごく酷い夢を見た。数々の酷い場面があったはずなのだが、唯一、イメージのかけらを覚えているのは、周りに砂と草しかない、開けた大きな交差点の真ん中で音楽をかけている3人組くらいの集団に、遠くから近づいていった私が加わり、じっとしていたかと思うとヘドバンを始め、アクロバティックなパフォーマンスをしていたかと思うと盛大にコケて右半身が血塗れでずるずるになり、傷を見せびらかすように惚けて立ちっぱなしになり、前後に連なる人姿のシークエンスに罵られるという、つげ義春のねじ式もうそう言えばラーメン屋の屋台で昼寝してる時に見た夢がネタらしいなと思い出すくらいどうしようもない脈絡だった。夢のイメージの強烈さは、本人にしか、そして本人さえも、目覚めた瞬間に風化してしまっているので、純度百%で伝える事ができない。ダリくらいになれば、全ての時系列を一つのコマにまとめてぺたりとやれるのかもしれないが、荒唐無稽をふんじばれる膂力というのは、ちょっと鍛え方が思いつかない。夢は、暖簾に腕押し特訓した後に、糠に釘をうつような、目標がない事への徒労みたいなものがあって、真面目に考えるほどげんなりしてくる。今日の晩飯はどうしようかと考えたが、昨日のローストポークの残りがある。でも、たしか、野菜が軒並みなくなってしまったはずである。明日、帰りに買ってこようか。卵も、牛乳も、みんな同じタイミングで無くなりそうだ。こんな季節なのに、蚊が飛んでいる。昨晩から。ベープを焚いたのに、さっきもまだいた。寝ている時に左の鎖骨のところを刺された。歳時記に従ってほしい。