他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

カラフル焼菓子

三島由紀夫『レター教室』を読み始めて、しょんぼりした。どれくらいしょんぼりしたかと言うと、椅子の上に体育座りして、しばらくじっとする事を何回か繰り返したくらいしょんぼりした。それくらい面白い。まあ面白い。嘘だと思うなら読んで御覧なさい。人の日記を読んで面白がれる器量があるのであれば、この本は間違いなくアタリです。ついでに、特装帯で小沢健二のエッセイが書いてあって、それもなかなかよい。『手紙は100mの爆走』だとか、目の止まる文句がたくさんある。ともかく、『レター教室』は、まえがきがあって、これをお手本とすれば、各章(章の終わりにAとかBとか、アルファベットをモチーフとしたデザインが置かれてあって、数えていないけれどA~Z、要するに日本語で言う『いろは』を洒落として組み込んでいるのだろう)に掲げたテーマの手紙を書くに役に立つという事なのだが、これを下敷きにした手紙を書いてよろこんで文通してくれる相手がいたら、それは絶対、ぜったい大切にするべきであるくらいに普遍的ではない。つまり、これは、文例集の皮を被った、書簡小説の一種なのであると、私は了解している。登場人物は5人いて、それぞれがまた色濃い個性で、そして三島由紀夫がそれを文体と語彙で書き分けているので、そこに打ちのめされて、感嘆して、その手腕に惚れ惚れして、しょんぼりしたのだ。章ごとに、基本そのうち二者の書簡が出てくる。5人には、それぞれ疎密の差はあれど接点があって、それが読み進めるにつれてぐにゃぐにゃと有機的な模様を見せ、人間が立ち上がってきて、書いていてもう一回しょんぼりしたくなった。めちゃくちゃに、素敵な文章なんである。人生で、三島由紀夫の文章は、もしかしたらまともに読むのは初めてかもしれないのだが、もしかするとこの本だけ特異的にハマっているのかもしれないが、肉もあって血もあって、生きることのあぶらがきらきらと滲み出している。いい文章である。この本を読んでも手紙が書けるようにはならないが、この本を読んだら手紙が書きたく、書いてみたくなる。それには、小沢健二のエッセイも一役買っていて、やっぱり、こっちも面白い文章なんだな。まだ半分も読んでいなくて、なぜと言うに、いちいちがやたら面白いので、一気に読んでしまうと、読み終わってしまって、この読書が終わってしまうのがいやだからなのだが、こんなうすっぺたい本でよくこんな気持ちにさせてくれるものだ。