ディックの『変数人間』を読んだ。表題作が面白いのはもちろんだが(装丁の画はそういう意味なのね)、一冊として全体を見ても完成度が高い。後半4編が出色の出来だと思う。そもそも、ハヤカワから出ているこの短編集たちは、おおむね翻訳の質がいいので意識が散らずに読める。多分まだ読んでいないものが一冊あるのだが、本屋で見つからなかった。年明け以降は特にウルトラぼんやりしているので、指の先にあったのに見逃している可能性は十分ある。2017年の二刷なので、それほど数は出てないのかな。編者の大森望という人は嗅覚なりセンスがいいんだろうなと思うが、たしか劉欣慈の三体の翻訳にも関係していた。その貪欲さがまぶしい。