他愛がない

日記が置いてあります。タイトルと中身はあまり関係ありません。短編小説も書いてます(https://kakuyomu.jp/users/mezounagi/works)。 twitter:@mezounagi mail:mezounagi★outlook.jp(★→@)

顧みる事をしなかった男

物干し竿にしずくがぽつぽつする音が、起きた時からしていて、家を出る前に天気予報を見ると、日曜日くらいまでずっと雨のしるしが出ていた。数日先に関しては、あくまで予報であるので、着地点が異なる事もあるわけだけれども、あまり雨が降って欲しくない日まで雨が降るようなので、すでに今から嫌な気持ちでいっぱいである。寒かったので、パーカーを引きずり出してすっぽり被った。傘を差しても差さなくてもいいような、薄く烟るだけの雨だった。帰りの、ほんの一瞬だけ差した。帰りにゴミ袋を買って帰ろうと思っていたのに、そう考えていた事を今思い出した。帰る時、壁に埋まって一列になっている駅の券売機が、端っこのそれだけ故障していた。あるいは、あそこだけなにか別の機械だったのやもしれん。とりあえず、それは通常の駅利用では全く縁のないスペースであり、そして、そこで、スマホグレイテスト・ショーマンのあれを流しながら、ダンスの練習をしている人がいた。全く意味が分からなかった。大学の生協前で、ガラスに反射して自分の姿が見えるからという理由でダンスサークルに所属する有象無象がわらわらしている事はあったが、あれは大学という、公と私がギリギリ分かたれる前の最後の場だから発生しうる事象であって、それ以外では、有り得て、広い公園のロータリーだとか、芝生みたいなところくらいでしかお目にかからないのではないかと思っていた。どうやら、しかし、それは、私が現実に期待していた事は、予想以上に幼稚だったという事になるらしい。駅構内であるという事、改札出てすぐのザ・目の前であって人目を「一応」気にしていたのか、身振りは多少小振りであったが、それにしたってダンスという行為が日常営為の中で、それこそショウかCMくらいでしか見ないのだから、来ているジャンパーの擦れる音と、ちらちら周りを見てくる社会性の欠片みたいなものが、空間として明らかに浮いていた。みんな見ないふりをしていて、真隣にある駅員窓口も何も言っていなかった。ただ、しとしとと湿った空気の中で、ばさばさと身を捌きながら、ひとところの空気が乱れていた。どう贔屓目に見ても学生ではなく、中年と言って差し支えなさそうな感じだったので、そういう感じの人が、そういうシチュエーションにあって、何故あのような事になったのか、想像の指先でさえ今だに届かないままである。 何か、これに関する合理的な解釈があれば、ぜひとも教えていただきたい。