これはものの例えだが、材料がなければ、サンドイッチ屋はサンドイッチを作れない。作ってくれと言っている本人が材料を寄越してこなければ、何もする事がないのである。パン切りナイフを研いだり眺めたり、昨日のパンの耳をラスクにしたり、それくらいしかやる事がない。あるにはあるが、本筋ではない、と言うのが近いのだろうか。いつもの私の世迷言かもしれない。さっき、晩飯を食べている最中、どういう角度でそうなったのか、舌の中ほどを歯で食い破ってしまい、どうしようもない位置で口内が損傷していて常にじわじわと痛い。本当に変なところがちくちくする。困ったものだ。困ったものは、大体そうなったら困る時に発生するから困るのだけど。しばらく消息を聞かなかった人について、聞き及ぶ事があった。それについて、それはもう、たくさん思うところ考えるところあったのだが、書ける事はひとつもない。デリケートだし、書きたくないし、という二つの点で。水は方円の器に従うが、水でないものはどうすればいいのか。自分の中に在る原理が出した答えを否定された時、その答えを自ら否定して引っ込め自らの横死を認めるか、その答えを掲げて勝ち目が高い朧昆布くらい薄い戦いに身を向けるか。内に持っている原理が、現行のそれと合わない場合、その時点で何をやってもだめなのだ。こんなにやるせない事があるだろうか。そんな事を考えた。